そこかしこに笑いを誘うフレーズをはさみながら、
人が生きていく上で直面する困難や苦悩を描き出す西加奈子さん。
そのカラッとした書きっぷりに救われることが、私は多いのです。
今回は特に私がおすすめしたい4作品を紹介します!
一番最後に、全作品の一覧チェックリストもありますので、
ぜひご活用ください!
西加奈子さんについて
1977年生まれ。
イランで生まれ、帰国後は大阪で過ごす。
2004年に『あおい』で小説家デビュー。
家族や友情をテーマに書かれた作品が多い。
カラッとした笑いとともに、人情を感じる描写が多いのが特徴。
おすすめ作品4選
(作品のかっこは、最初の単行本の出版年です)
理想の夫婦を描く物語
きいろいゾウ(2006)
あらすじ
夫の名は無辜歩(むこ・あゆむ)、妻の名は妻利愛子(つまり・あいこ)。
お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会からやってきた若夫婦が、田舎暮らしを始める。
背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう
過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。
二人の生活を、めぐる季節とともに描く物語。
おすすめポイント
ツマは素直で女の子らしく、ムコさんはしっかり者でツマを心の底から愛していて、
二人のあったかい関係にほのぼのします。
映画版はこちら
明るすぎる肉子ちゃんが最高!
漁港の肉子ちゃん (2011)
あらすじ
北の港町にある焼肉屋で働いている肉子ちゃんは、太っていてとても明るい。
娘のキクりんは、そんなお母さんが最近恥ずかしい。
肉子ちゃん母娘と人々の息づかいを活き活きと描いた、勇気をくれる傑作。
おすすめポイント
肉子ちゃんの語尾に、常に「!!」や「っ!」がつくところ、
ワケのわからないメモを残すところ。
キクりんこと喜久子だけが聞こえるモノや動物たちの声。
思わず笑ってしまうのだけど、最後にはじんわり泣けてくる。
可笑しくも愛おしい、母娘の物語です。
第152回直木賞受賞作
サラバ! (2014)
あらすじ
圷歩(あくつ あゆむ)は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。
その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。
幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。
そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。
メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。
日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。
おすすめポイント
「僕はこの世界に、左足から登場した」
印象的な一文から始まる、長い長い男性の人生を描いた物語。
文庫は上・中・下の全3巻、一冊ずつの厚みもものすごいので、
ちょっと尻込みしてしまいますが、読み終わった後の感動はひとしおです!
タイトルの意味にここまで感動した本は、初めてかもしれません。
ぜひ、この高い山を登り切って、そこから見える景色を堪能していただきたい!
がんと闘った著者の、心ゆさぶるエッセイ
くもをさがす (2023)
内容紹介
2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、
乳がん発覚から治療を終えるまでの約8 ヶ月間を克明に描いたエッセイ。
カナダでの闘病中に抱いた病、治療への恐怖と絶望、家族や友人たちへの溢れる思いと、時折訪れる幸福と歓喜の瞬間――。
切なく、時に可笑しい、「あなた」に向けて綴られた、誰もが心を揺さぶられる傑作です。
おすすめポイント
乳がんとなった西さんが、自分の身体としっかり向き合って、
治療を受けようと決意する瞬間の言葉が、私にも勇気を与えてくれました。
カナダの病院の看護師さんたちのセリフが大阪弁で書かれていて、
状況はシビアなのに、ニヤッと口角があがってしまうおかしさもあり、
悲観しすぎない著者の筆致に救われます。
いままさに病気と闘っている人、あるいはこれからの健康に不安をもっている人は、
きっと西さんの言葉に勇気づけられるはず。
全作品一覧チェックリスト
全作品制覇を目指している方は、こちらもどうぞ。(ダウンロードしてご利用ください)
まとめ
クスッと笑える小説も、人間を描く骨太な小説も、
どちらも西加奈子さんならではの世界!
軽い気持ちで読みたいとき、ずっぷりと小説の世界に沈みたいとき、
どちらの気分にも応えてくれる作品がそろっています。
そして、読み終わった後には、「よし、明日もがんばろう」と思える作品ばかり。
あらすじを読んで、自分の気分にあった作品をぜひ選んでみてください♪