最近メディアで多く取り上げられており、
改めて紹介するまでもない超有名本ですが、
久しぶりに「世界って楽しい!」となった本なので、個人的な感想を書いていきます。
内容紹介
「動物言語学」という新しい学問分野を生み出した著者が、
シジュウカラの声や生態に興味を持った高校生の頃の話から、
大学生時代におこなった実験や研究の話、
そしてやがて「鳥には鳥の言葉がある」と気付き、
さらに研究を深めていくまでの過程を記した一冊。
感想
「わかる」と言い切れる強さ
まず、この本のタイトルからビビッときた。
「鳥の言葉がわかる」と言いきっている。歯切れが良い。
しかも、「僕にはわかる」と線を引いている点が巧妙。
「僕にはわかる」の中には、「みんなにはわからないだろうけど」という
ニュアンスが感じ取れる。
ある意味、読者への挑戦状。
「鳥の言葉」=人間が理解できないもの、という先入観を覆すタイトルである。
書店でこのフレーズを見てしまうと、
「え、鳥の言葉って人間でもわかるの?」と興味を持つ。
で、まんまと読まされてしまう。
そして、読んでみてさらに、「わかる」と言い切る著者の強さを感じることになる。
「わかりたい」を追求する執念
この本では、著者がシジュウカラの言葉を研究する実験過程が描かれている。
大学生の頃、軽井沢の森の中に、手作りの巣箱を40個設置して観察を続ける。
ときには食料がほぼ尽きてご飯だけになり、
ご飯にお湯を注いで食べると味変できて美味しい、という発見があるような、
はたから見ると過酷な状況。
でも著者が書く文章からは、シジュウカラとの生活を楽しんでいることが伝わってくる。
だけど、ただ可愛いシジュウカラが鳴いているのを観察して、
「『警戒しろ』って意味かも!」と決めつけているのではない。
学問として、シジュウカラの鳴き声の意味を断定するためには、様々な検証が必要である。
そして、それを学会に発表するためには、最新の論文を読み漁り、
視野を常に広く持ち続けることが必要である。
シジュウカラの研究と、学者としての学びを両立しているバイタリティがすごい。
また、実験結果を論文として発表すると、それを読んだ別の学者からの反論や指摘が出てくる。
それらの反対の意見を真摯に受け止めて、指摘事項に答えるための実験を考えて、実行する。
そんな学者としての誠実さに胸を打たれる。
「わかりたい」を追求する学者の執念を感じる。
「わかる」という快感が体験できる
この本には、シジュウカラの鳴き声が聞けるQRコードが掲載されている。
本書で解説されている声が、実際にはどんな声なのかがわかるのである。
試しに聴いてみると、なんだか聞き馴染みがある。
「この声、知ってる!」となる。
この瞬間、著者の研究が自分の生活に結びつく。
「わかる!」という快感は何物にも代えがたい喜びがある。
特に昨今は人間同士でも、いくら言葉を交わしても「わかりあえない」ケースが増えているように感じる。
SNS上での断片的な情報で判断されて、思いもよらない中傷にぶつかったり、
ハラスメント防止のために、雑談をする時にも気を遣って本音をさらけ出すことができなかったりと、
コミュニケーションの難しさを感じている人は多いのではないだろうか。
そんな風潮の中で、この本が提示してくれる「わかることができる」という事実は、
久しぶりに「わかった!」という喜びを感じさせてくれる。
「多くの人に、『鳥の言葉がわかる』という喜びを感じてほしい」というのが、
まえがきにも書かれている著者の想いである。
世界が広がる楽しさ
本書を読んで驚いたのは、
シジュウカラの言葉を理解しているのは、シジュウカラだけではないということ。
他の種類の鳥やリスなど、種別に関わらず動物たちはお互いの言葉を理解している、
ように見えるというのだ。
著者は、「人間はいつから鳥の言葉がわからなくなってしまったのだろう」と書く。
この本を読んでから外に出ると、自然と鳥の鳴き声に敏感になっていることに気づく。
そして、鳥の姿を見ると、鳴き声だけでなく、仕草にも注目してしまう。
何度も上を見あげるのは、空からくる外敵を警戒しているからかも?
二羽の鳥が翼をぱたぱたしたり、つつきあったりしているのは、どんな意味があるのかな。
今までそんな視点で鳥に注目したことがなかったけれど、
この世界には、人間以外の世界があるということに、今更ながら気づいたのである。
特に都会に住んでいると、「自然との共生」が身近にピンとこなかったりする。
周りはビルやコンクリートの道路。夜でも明るい。
だけど、ちゃんと目を向けると、そこには都会に住む動物たちが存在しているのだ。
そして彼らもコミュニケーションをとりながら、共に生活しているのだ。
そのことに気づけたとき、「世界って広いんだ」「動物たちの営みって面白い」と、
世界の新しい楽しみ方を知ることができる。
SNSや動画を見るのも楽しいけれど、外にも楽しい世界は広がっている。
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詳しくは書きませんでしたが、鈴木さんのお人柄もとても素敵なんです!
「子どもたちに、世界の楽しさを知ってほしい」という想いが伝わる動画。
ぜひ見てみてください!