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【小説】『街角ファンタジア』(村山早紀)~クリスマスに読みたい奇跡の物語~

人生山あり谷あり。

時には些細なことでうんざりしたり、時には人の優しさに触れて嬉しくなったり、

いろいろありますよね。

今回は、一生懸命生きている人たちが主人公の短編集を紹介します。

クリスマスに起こりそうな奇跡の物語たちです。

こんな人におすすめ
  • あったかい気持ちになりたい方
  • 猫好きな方
  • 日常とファンタジーの境界線の話が好きな方

あらすじ

「優しい心の持ち主を見守るささやかな魔法は、たしかに存在するんだよ」

クリスマスイブに失恋した青年、祖父の夢を叶えたい少女、

新たな課題に直面したイヤミス作家の女性、不思議な出会いを経験した本好きの少年、

未来が不安な女性ライター。

心優しい人たちの傷を、不思議な魔法が癒していく短編集。

おすすめポイント

猫が寄り添ってくれる

本作に収録されている短編たちは、ストーリーとしての関連性はないのですが、

どの話にも猫が登場します。

猫たちは、傷ついたり悩んだりする主人公たちに優しく寄り添い、

時に重要な役割を果たします。

作品の中で描かれる猫の仕草や表情は、

猫好きな方や猫を飼ったことのある方にとっては、

「あるある!」と頬がゆるんでしまう愛らしさ。

猫好きな人には、ぜひ読んで癒されていただきたい!

あったかいお風呂に浸かっているような心地よさ

主人公たちは、みんな優しい人たち。

ちょっと皮肉っぽいことを言う人もいますが、それでも心根は優しいんです。

そんな優しさに触れると、読んでいるこちらも優しい気持ちが伝染してきます。

「こんな風にとらえるんだ」「こんな気遣いのやり方があるんだ」と

人に優しく接する方法を新しく発見したり。

 

特にわたしが感じる「ベスト・オブ・優しい人」は、『星降る町で』の主人公。

クリスマスイブに失恋してしまい、どん底の気持ちにいる時でも、

弱っている猫を保護したり、困っている女性を助けたり、

人に手を差し伸べることを躊躇しません。

「美味しいケーキがあって、良かったなあ」

今夜、クリスマスケーキを買って帰って、ほんとうに良かったと思った。

猫のためにも、自分のためにも。

「クリスマスイブの夜に、悲しい思いはしたくないものなあ」

村山早紀 『街角ファンタジア』 実業之日本社, 2024, 24ページ

この4行だけでも、彼の優しさと心の広さが伝わってきますよね。

他の登場人物たちも、魅力的な人たちばかりなので、

一編ごとに、ホッと一息つける優しさを

おすそ分けしてもらっている気分になれます。

日常とファンタジーの境界線を感じられる

『街角ファンタジア』というタイトルの通り、

全編通して、物語の舞台は普通の街。

主人公たちは、特別な能力を持つでもなく、ただただ「普通」の人たち。

隣にいる猫が人語を話すわけでもありません。

私たちの日常に近い環境で、すこーしだけ、魔法のような奇跡が起こります。

身近な人のように、その生活や苦悩が分かるからこそ、

「こんな奇跡が起こったらいいなぁ」と思いを馳せてしまいます。

がっつりしたSFやファンタジー世界が苦手な人でも、抵抗なく読めると思います。

どんな奇跡が起こるかは、ぜひ実際に読んでみてください!

まとめ

魔法のような奇跡が起こる5つの物語。

すべて、あったかい気持ちになることを保証します!

奇跡が起こりそうなクリスマスの夜に、ぜひご一読ください♪

最高の読書体験を、ぜひ!

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ちょっと不思議な出来事が起こる物語も収録されています。

懐かしくもホッとする気持ちにさせてくれる雰囲気は、

『街角ファンタジア』に通じるものがあると思います。