2024年5月に発売された阿部暁子さんの新刊。
多くの書店員さんや読書家たちからの評価が高く、早くも来年の本屋大賞の候補作になるのではという予想の声もちらほらと…。
「王様のブランチ」でも取り上げられたので、ご存じの方も多いのでは。
そんな注目作、私なりのおすすめポイントをご紹介します!
- 毎日の雑事に追われて疲れちゃった方
- 元気になれるヒントがほしい方
- 「寂しいなぁ」と思っている方
あらすじ
法務局に勤める野宮薫子は、最愛の弟を突然亡くし、夫からは離婚をつきつけられ、アルコール漬けの生活を送っていた。
弟の遺言書に「元恋人のせつなに遺産を渡してほしい」と書かれていたことから、薫子は遺産相続の話をしに、せつなに会いにいく。
ところがせつなは「いらない」の一点張り。
せつなの冷たい態度に腹を立てつつも、愛する弟の最期の願いを叶えるために、
何とかせつなと会話をしようとする薫子。
そんなある日、ひょんなことから、せつなが勤める家事代行サービス「カフネ」のボランティア活動に協力することに。
家事代行業務を一緒にこなすことで、薫子とせつなの関係性は少しずつ変わっていく…。
おすすめポイント
薫子とせつなのコンビが良い!
自分の努力次第でどんなことでも乗り越えていけるという熱血タイプの薫子(41歳)と、
人に興味がない素振りでクールなせつな(29歳)。
性格が正反対で、世代も違う二人が、お互い嫌味交じりの軽口をたたきながら、
家事代行という共同作業をこなしていくプロの仕事っぷりに、
シスターフッドもの(女性同士の連帯を描いた物語)を読んでいるようで元気をもらえます。
「愛しく想う気持ち」を思い出す
タイトルにもなっている「カフネ」とは、ポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指をとおす仕草」という意味。
この言葉だけで、愛しい人を思い出して胸がぐっとなりませんか?
優しくなでてあげたい、またはかつてなでてあげていた、なでてくれていた…
そんな愛しい瞬間を思い起こさせる言葉ですよね。
物語の中では、せつなが勤める家事代行サービス会社の社名が「カフネ」となっています。
このカフネの仕事を通して薫子が出会うのは、
・小学生の娘と母の二人暮らし家庭
・母の介護をしている女性
・双子育児に疲弊している母親
・中学生の息子と小学生の娘と母親の三人家族
など。
いずれもゴミ捨てや部屋の片づけ、食事の用意もままならないほど疲れきっている人たち。
そんなお客さんたちに、薫子とせつなはどんな風に声をかけ、家事をしていくのか。
仕事と割り切っているようでいて、その言葉やサービスには「愛しさ」を感じます。
そして、各家族のエピソードを読んでいくうちに、自分の大切な人への「愛しさ」が湧き上がってきます。
元気になれるヒントが書かれている
例えば掃除を担当する薫子が一番最初にすることは、「窓を開ける」こと。
こうすることで、停滞していた空気がきれいになって、部屋が洗われる感じがする、と書かれています。
例えば料理を担当するせつなは、薫子が自分の誕生日に買ってきたケーキを落としてしまってショックを受けている中、それをパフェに変身させてしまいます。
こんな風に、マイナスな気分をプラスに転換できるノウハウが、ところどころに散りばめられています。
すぐに真似できる簡単なものから、ちょっと手の込んだものまで。
「やってみたい!」と思えるヒントがきっと見つけられますよ。
寂しさに寄り添ってくれる言葉たち
アルコール漬けの生活から薫子を引っ張り出してくれたせつな。
でも、せつなもある問題を抱えていました。それを知った薫子がとった行動は?
「カフネ」のお客さんたちの家事代行をすることで、薫子が得たものとは。
このお話を読んでいくと、人間、一方的に助けられているわけではないことに気付きます。もちろん、助けているばかりでもない。
「一緒に生きよう」
これほど力強く、優し言葉は他にない。そう思います。
そう言ってくれる人がいること、そう伝えたいと思える相手がいること。
この二つがそろえば、人は最強になれるのではと思います。
まとめ
この本のもう一つの魅力は、せつなが作ってくれるおいしそうなごはん。
あったかいごはんを食べたいな。
すっきりした部屋に寝っ転がりたいな。
そんな些細な願望も、本当に元気がない時はできないんですよね。
でも、そんなに疲れきっている時は、がんばらなくていいんです。
人に頼ってもいいんです。
がんばりすぎてしまう人を応援してくれる本、ぜひたくさんの方に読んでほしいです。
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